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更新日:2017年11月13日

地域活動

ライオンクラブ 池Lからアメリカからのメール

アメリカにおけるドラッグ対策

10月22日にプレイノ市に到着し、翌月曜日孫二人を小学校まで送ったところ、下の写真に見られるように、学校の入り口の柱に赤いいリボンが巻き付けてあった。
 
今週はRed Ribbon Weekということで、ドラッグからフリーであることを宣言しているのだという。また下記のような紙も孫たちに配られたほか、毎日違うワッペンを胸につけて帰ってきた。
学校からのメールによれば、月曜日から金曜日まで、例えば月曜日には、“ I’m proud to be drag free “で赤い服を、火曜日には “ I’m too bright for drugs “とあって明るいシャツを、水曜は” Be a H.E. R. O.(Help, Encourage and Respect Others)とあり、スーパーヒーローのシャツを、木曜日には、” Team Up Against Drugs “ で大学かプロチームのシャツを、そして金曜日には、 “Slam Dunks Drugs”(Drugsをやっつけるといった意味らしい)で、小学校の精神を示す、あるいはスクールカラーの服を着るといった具合だ。しかも孫はドラッグに関するビデオも見させられたともいう。小学校から反ドラッグ教育を1週間も施していることに驚かされた。
   
 
  私の参加しているライオンズクラブは健全な青少年の育成に関する活動を大きな柱に掲げており、三浦半島では横須賀のクラブがとりわけ熱心で、講習を何回か受けて資格を得ると、講師となって高校の授業の一環として“ダメ、絶対”という反ドラッグの講演をしているが、小学校まで出向くとは聞いたことはない。
アメリカではドラッグは深刻な問題になっていることは以前から聞いていたが、米国到着早々の10月27日にトランプ大統領が、オピオイド被害は国家の恥とも述べ、全国的な「公衆衛生の非常事態」宣言(Declaration of Public Health Emergency)をした、と報道された。振り返ってみると、日本にいるときにもアメリカにおけるドラッグ、特にオピオイドの被害についての記事をいくつか読んだ記憶がある。
オピオイドはケシ(opium)から採取され、がんの痛みなどを抑える鎮痛剤として1990年代に普及したが、常習性と中毒性が強く、医療用の目的では、現在ではかなり抑えられている。しかし2016年時点で米国人の依存症患者は200万人を超えており、1日に100人が死亡しているという。
これはアメリカ経済の生産力にとっても深刻な事態となっており、25歳から54歳の働き盛り世代の男性の労働参加率が下記の図にある通り主要国で最低となっているが、この10年ほどは急激に落ち込んできている。
 
グローバル化に伴って製造業が衰退し、技術進歩で低技能の労働者が求められなくなった半面、働き手側の教育や技能が足りないというのは、先進国共通の課題となっている。しかしゴールドマン・サックスの調査によれば、特に米国でこのように労働市場への参加率が低まっている背景にはオピオイドの蔓延があるようだ。2015年の過剰服用による死者数は違法なヘロインを含めて33千人強と00年の4倍近くに膨らんでいる。アメリカ当局の調査では12歳以上の米国民のうち9750万人(36%)が直近1年で医療用鎮痛剤を服用した。大半がオピオイド系で、このうち1250万人が不正使用を経験し、203万人が依存症とされた。確かにアメリカの映画を見ると、若い世代がなんの抵抗感もなく、ドラッグを吸っているのをよく目にしている。
働き盛り世代なのに労働力となっていない男性の半分弱が鎮痛剤を日常的に服用し、うち3分の2がオピオイドなど医療用だった。この世代の男性の非労働力は約700万人。約200万人が医療用を日常的に使っている計算だ。
 
 下記の地図で明らかなように、こうしたオピオイド中毒の多いのは、いわゆるラストベルト(Rust Belt)と呼ばれる、ペンシルベニア州、テネシー州、ケンタッキー州、ウエストヴァバージニア州などの一帯で、ハイテク産業ではなく、従来型の製造業が主体の、いわば衰退している産業で働いている白人中間層である。そしてこうした没落した白人中間層の不満や焦りがトランプ氏を大統領に押し上げた原動力だったのだ。その背後では薬物中毒や白人至上主義の台頭といった解決の難しいゆがみを広げている。
 トランプ大統領としては、自分を大統領に押し上げてくれた白人中間層の多くがオピオイドなどのドラッグに走っているわけだから、問題を極めて深刻にとらえ、非常事態宣言を出すのも当然だろう。ただ、彼の宣言は連邦政府による予算措置を伴うものでないために民主党などは、対策が不十分だと批判している。確かにカウンティ(郡)によってはオピオイド対策に占める財政支出が膨大となって、カウンティ財政を圧迫しているのだから、連邦政府による予算措置がなければ対策は不十分なままで終わらざるを得ない、とのことだ。
 
薬物過剰摂取の増加に取り組むカウンティは、緊急通報の増加、監察医や検視官への支払い増加、刑務所や裁判所の過密状態によるコスト高に直面している。米国でオピオイド系鎮痛剤の乱用による死者数が増加するなか、この新たな薬物危機の最前線に立つ地域社会が、財政負担という思わぬ打撃に直面している。
例えば、ペンシルベニア州インディアナ郡における検視や毒物検査のコストは、2010年の約8万9000ドルから2016年には16万5000ドルへと、6年間で2倍近くに膨れ上がっただけでなく、 裁判コストも増大している。地元の当局者によれば、これは主として、オピオイド中毒関連の犯罪の訴追及び被告人のための公選弁護人費用のためだそうだ。 
インディアナ郡から南に約480キロ離れたウェスト・バージニア州マーサー郡では、オピオイド中毒関連の刑務所費用が、人口6万2000人を抱える同郡の1200万ドルという小規模な年間予算を侵食している。 同郡における今年の刑務所費用は2015年に比べて10万ドル増加する勢いだ。 
「こうした刑務所費用の増加分の少なくとも90%はオピオイド中毒関連だ」、「毎月、刑務所のために支出する金額は、経済開発、保健部門や救急サービスの費用の総計よりも多くなっている」とのことだ。
さらに驚くべきは、検視業務と薬物検査業務がビジネスとして成り立っているということだ。これらの業務対策の企業を起こした企業経営者によれば、2014年に同社が対応した死亡例のうち、薬物過剰摂取によるものは約40%だった。それが昨年は62%に跳ね上がったといい、従業員も増やしているというのだ。
 これらの事実を知ると、アメリカにおけるドラッグの蔓延が生産力だけでなく、財政面でも大きな影響を与えている事実が分かる。対策を講じるのは喫緊の課題であり、3年後の2020年に大統領の再選を目指すトランプ大統領にとっても重要な政策課題となっていることは容易に理解される。
しかし余談ながら、トランプ大統領は就任以来、相矛盾した発言を繰り返しており、政治家の主張の真偽を検索するサイト、ポリティファクトではトランプはウソつきと評価しており、議会はもちろん行政府の役人からも信頼されていないということだ。中には「アメリカをトランプから救うのが仕事だと思っている人が政権内にいる」と発言した広報部長(この発言の後解雇された)もいたぐらいで、トランプの望む政策がどこまで実行されるかは極めて疑問と言わざるを得ない状況という見方もあるようだ。

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