27年度 町長施政方針

平成27年度予算案の提出にあたりまして、施政方針を申し述べる機会をいただき、深く感謝の意を表します。平成27年度は、今後10年間にわたる第四次総合計画がスタートする節目の年です。町民の皆様、議会や審議会などの関係の皆様、そして多くの職員の想いをまとめた葉山町の将来計画が着実に推進できるよう、皆様とともに全力を挙げて取り組んでまいりますので、広くご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。

さて、昨年12月に閣議決定した国の平成27年度予算編成の基本方針では、現下の財政状況を「急速な高齢化を背景とする社会保障経費の増加、リーマンショック後の経済危機への対応、経済成長率の低迷等により、財政状況は大幅に悪化した、公的債務残高はGDPの2倍程度までに累積しており、きわめて厳しい財政状況にある」としています。

こうした中、「地方の一般財源総額については、平成26年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」として、平成27年度地方財政対策では、一般財源総額を前年度対比で1.2兆円増額しました。しかしながらこの増額は地方消費税を中心とする地方税の増収が前提となっており、地方交付税や臨時財政対策債の枠は前年度対比で減少しており、社会保障と税の一体改革に伴う社会保障費の増を勘案すると、地方自治体は大変厳しい財政運営を迫られています。

一方、当町では、口座振替キャンペーンの実施や本町初となる町単独不動産公売を実施するなど、納付率向上への取り組みにより町税収入の伸びが見込まれるうえに、景気が緩やかな回復基調にあることを考慮すると、短期的には個人所得の伸びや譲渡所得・配当所得の増に伴う税収の改善は期待できます。しかし、中長期的に見た場合、少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口の減少や、前述のとおり、国からの財源が実質的にはマイナスに振れていることを踏まえると、今後、歳入全体は減少に向かうことが予測できます。

歳出面では、人件費削減の取組みや町債発行額の抑制による公債費の減など、経常経費の縮減が図られ、平成25年度の経常収支比率が対前年度比1.7%減の99.8%に改善されました。しかし、少子高齢化対策などの扶助費を中心とする社会保障関連経費の増などもあり、依然として財政が硬直化している状況に変わりありません。今後も施設の維持補修や大規模改修など、施設整備費用の増加が見込まれる中にあって、引き続き効率的な行政運営に努める必要があります。また、基金や町債については、第四次総合計画に掲げた数値目標にしたがって計画的に管理・運用していくことが求められます。

こういった状況において、当町でも少子高齢化を一例とする人口減少社会に対応するための計画策定が必要と考え、空き家問題への対策などを主軸に、地方人口ビジョン、地方版総合戦略策定に向けた取り組みを検討し、第四次総合計画に定めた、約33000人の人口維持のための施策をまとめてまいります。人口減少の著しい三浦半島域において、地域の魅力を高め、地域ブランドを活かして、葉山が強く発信していくことも大切な役割だと認識しています。

その三浦半島域の首長懇談会、三浦半島サミットも本年5月に葉山町開催を予定しており、4市の市長が当町に集まり、三浦半島の今後について議論し行動します。第2回逗子サミットで発行した自転車半島宣言に則って、当町でも南郷上ノ山公園の進入口を利用した葉山町南郷ヒルクライムレース(仮称)を企画し、自転車による健康増進、町民と近隣住民の皆様の交流、交通ルールの周知・徹底などを進めてまいります。また、海を利用した観光施策として、神奈川県の進める「かながわシープロジェクト」にも積極的に協力し、三浦半島を一つとした活性化に寄与してまいりたいと考えております。今後も、自治体経営に欠かせない近隣自治体との連携や協力の機会を的確に捉え、効果的なパートナーシップの構築に努めてまいります。

なお、ヒルクライムレースの会場付近となる南郷地区においては、葉山町商工会と連携した南郷地区活性化事業がいよいよ施設工事に入り、町としましても旧汚水処理場解体工事ののち、周辺環境整備に取り組んでまいります。商工会の進める共同店舗施設の周辺河川や緑地の整備を進め、訪れる人々が安らぎを得られ、また近隣住民の方々の利便向上につながることを考慮した空間づくりを進めてまいります。そして、一次産業の活性化につながる市場機能に併せ、交流拠点として町の内外から愛され、人が集まる場所にするべく、この地域の可能性を育て続けたいと考えております。

さて、平成27年度予算編成では、政策重点を「子育て」から、「健康」としました。神奈川県の健康寿命を伸ばそうという「未病を治すかながわ宣言」にも関連し、健康をテーマに各部各課の取り組みの優先順位付けや新たな事業を見出しました。健康には医療科学から見た食や運動による身体の健康の一方、社会参加や自己実現による心の健康、そして、そういった人々の健康がつくる社会の健康があります。

まずは、広く葉山の町民の皆様が姉妹都市の草津温泉につかって、心や身体を癒していただこうと、草津町や関係機関の協力を得て、従来の宿泊助成にクーポンの発行を加え、全町に広報してまいります。また、健康の基本である予防では、町民の有志の方々に作成していただいた葉山体操をDVDにして普及したり、体力測定会の実施やその他スポーツの促進、また各種検診についても、新たに胃がんリスク検診を導入し、併せて、脳ドック、人間ドックの費用助成を開始します。テーマこそ変わりますが、引き続き、子育て環境の充実には努めるとともに、小学校6年生までの医療費助成の所得制限を撤廃します。介護分野においては短期入所生活介護所、いわゆるショートステイでの看取り加算を行います。医療、介護、地域間の連携を強化して在宅医療の実現を目指す一歩として踏み込み、逗葉医師会等にもご協力いただき、今後とも在宅介護を充実させていきたいと考えております。

他にも、健康に関わる様々な事業、施策を検討してまいりましたが、1年限りで充足されるテーマだとは考えておりません。今後も引き続き皆様のご意見を頂戴しながら、葉山町らしい健康の実現を議論し、形にしてまいりたいと考えております。

次に教育委員会では、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正にともない、今後2年間かけて、国の第二期教育振興基本計画や神奈川県の教育ビジョンを参酌し、葉山町教育振興基本計画として第二期葉山町教育総合プランを策定します。内容には、児童生徒の「確かな学力」向上やそれを支える小中連携・小中一貫教育等の施策を盛り込んでまいりたいと考えております。そのためにも、平成27年度はすべての教職員にPC等を整備することによって、学校事務作業の簡素化・迅速化を図るとともに、情報教育に係るすべての教職員のICT活用能力の向上及び「確かな学力」づくりにつながる教材作成能力等の向上を図ってまいります。

なお、中学校給食につきましては、関係部課長で構成される葉山町立中学校給食推進委員会において、引き続き検討を行い、平成27年度内には、実施に向けた基本計画案をまとめてまいります。

情報の拠点、葉山町立図書館につきましては、蔵書・資料や新聞雑誌等定期刊行物の充実を図るとともに、エレベータやトイレの改修を図り、施設の環境整備を行います。また、雑誌スポンサー制度や読書活動推進の一助となる読書記録手帳の導入を進めてまいります。

次に、昨年の施政方針でも皆様にお願いをした、ごみの収集方式の変更による資源化減量化につきましては、実施前に比べて収集可燃ごみ量が22%削減しました。それ以外の資源ごみの回収なども成果を挙げており、順調かつ、素晴らしい結果ではありますが、ここに甘んじることなく、さらに資源化・減量化が進むよう、町内会と行政が一堂に会して意見交換会を開催したり、事業系ごみ回収のルールを徹底したり、よりきめ細やかな対応、ルール遵守で更なる推進を果たしてまいりたいと思います。

次に、私が就任してから3年間、敷設工事をペースダウンし、今後の方向性について検討を重ねてまいりました下水道事業につきましては、平成26年度、職員による町全体の排水に関わる検討から、公共下水道については、下水道審議会の議論を経て、全体計画等、今後の下水道事業のあり方について平成27年度中に定めます。

平成27年1月には神奈川県も同席のもと、国土交通省と議論を交わしたところ、生活排水処理のあり方、10年概成に向けた、いわゆるアクションプランを定め、葉山の地形に即した、新たな手法を取り入れるモデル都市を目指すこととしました。今後は国と県の理解、協力を得ながら、町民の皆様のご理解をいただいたうえで、効率的、効果的な下水整備に全力で取り組み、葉山の水環境を保全する、という本質目標を達成したいと思います。

次に、事務事業を執行する行政について申し上げます。平成27年度は、機構改革による政策財政部の設置など、組織的性格に大きなインパクトがある年となります。政策財政部は内外、全体を見て企画し、事業部の事業遂行を、情報、ソフト、お金の面から支援する部署になります。組織運営、行政経営の頭ともなり、その最たる仕事は情報の充実と現場との連携です。

業務としての情報力強化、連携は終わりのない仕事です。より仕事がしやすく、より町民の皆様のニーズに応えられる役場であるために、大切なことは変化を恐れず、いまある状況を客観的に判断し、今後の最善策をより多くの情報から見つけ、判断することです。引き続きの行政テーマとしている横連携のツールに情報連携を加え、さらに網の目を強化し、内外において信頼できる、強く自立した組織を目指します。

また、私はこれまで、行政の政策重点を設定し、それに基づいて各部が検討し、政策を示すと同時に、その結果、「役場のみんなで取り組み、目標を達成する」という一方向性を大切にしていただきました。昨年6月から開始したごみの資源化減量化に伴う、戸別収集や資源ステーションの運用は、困難と言われた取り組みにもかかわらず、クリーンセンターをはじめとした関係職員の努力と、全町民の皆様の協力が一つになることで順調な成果を記録しています。改めて、皆様に深く感謝申し上げます。今後も、こういった成功体験をそれぞれが自信に変えて仕事に取り組んでもらい、引き続き、チームにおける目標設定、情報連携による共通認識、そしてみんなが一つの目標に邁進する、そういった仕事の進め方を大切にしていきたいと思います。

平成26年度からは人事評価を全庁に導入しました。職員同士のコミュニケーションをさらに活発化させ、各部・各課・職員個人の「強み」を再確認し、活かしていけるよう有効に機能させてまいります。

最後に、東京オリンピックに向け、当町においてもヨット発祥の地として、すでに世界選手権の開催が決まっているヨット競技があると聞いております。英語版の町の案内パンフレットを作ることも進めてまいりますが、おもてなしの心を町全体で表現できるように、民間企業など、外部のパートナーともしっかり連携し、準備を進めてまいりたいと考えております。例えば、京急バスさんには、横浜駅までの直通バスの開通など、これまでもお応えをいただいてまいりましたが、引き続き町内の交通環境向上へご尽力いただけるよう、葉山を創るメンバーとして改善に向けた意見交換を重ねています。

小さな町だからこその可能性を追求し、多くの町民の皆様が町内で休暇を過ごし、多くの町外の皆様が、いつかは葉山で暮らしたい、と思ってもらえるような町を目指しています。

なお、第四次総合計画の施策体系に沿った詳細な事業説明は、事業の位置づけが大きく変わるものもありましたため、別紙第四次葉山町総合計画 前期基本計画 基本目標別主な事業概要書においてまとめましたので、ご参照ください。

以上、私の施政方針を述べさせて頂きました。平成27年度の行政運営には引き続き全力を挙げて取り組んでまいりますので、議員の皆様におかれましては、一層のご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、ご賛同を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

更新日:2015年03月08日

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